2010年 03月 05日
王国 その1・その2・その3

よしもとばなな
『王国 その1 アンドロメダ・ハイツ』
これは、私と楓をめぐる、長く、くだらなく、なんということのない物語のはじまりだ。童話よりも幼く、寓話にしては教訓が得られない。愚かな人間の営みと、おかしな角度から見たこの世界と。
つまりはちょっとゆがんだおとぎ話だ。

『王国 その2 痛み、失われたものの影、そして魔法』

『王国 その3 ひみつの花園』
新聞広告でタイトルを見た瞬間に「読まなきゃ!」と、本屋へ直行。
最近、こういうことがよくあります。よい兆候(^^)
ぽっかり時間が空いた日に、一気に3巻読みきりました。
読んだ、というより、えぐった感じ。
例えていうなら、う~ん、でっかいカップに入ったアイスクリームを
力を入れてスプーンでぐぅっとすくった感じ。余計わからんか(苦笑)
一度に全部は食べ切れなくて、次にふたを開けてカップの底まで
ちゃんと味わって食べきったら、感想は変わるのかも知れません。
そんでも、このアイスクリームは濃厚でおいしい・・・
要するに、"効いた”ってことです。私には。
主人公・雫石(しずくいし)。
薬草のお茶で身体の悪い人を治してきたおばあちゃんと、山の中で暮らしていた。
そのおばあちゃんに恋人が出来て海外へ行ってしまうというので、雫石も山を下りたところで
目の不自由な占い師の男・楓と出会い、アシスタントをすることになる。
楓はものすごい美男子なのだけどゲイで、片岡さんという楓のパトロンはものすごい嫉妬深くて
雫石自身もおばあちゃんから受け継いだ不思議な力を持っていて
サボテンを育てる真一郎と恋に落ちて・・・
ばなな作品なので、出てくる人々は、それぞれにキョーレツです、かなり(笑)
雫石と自分には、その生活も、性格も共通するところはほとんどないと思うのだけど
「今日の夜、自分が部屋にいて電話をしている姿がどうしても具体的に想像できない」と
思いながら帰ってみたら、アパートが火事で焼けてなくなっていたり、
そういう直感みたいなものは、なんとなくわかるような気がするのです。
不思議だったのは、この小説を読んでいたとき、物語に入り込んでいたのではなく
逆に、全然別のことを考えていて、本当にいろんな事が頭の中をぐるぐる廻ってたこと。
そして、読み終わったときには、自分の中に答えが出てました。
少し前は失ったものを嘆いてばかりいたが、今となってはなにも失ってなんかいなかったことがなんとなくわかる。
自分の体と心と魂、それを持ってさえいれば、欠けるものはいつでもなにひとつなくて、どこにいようと同じ分量の何かがちゃんと目の前になるようなしくみになっているのだ。もしそう感じられないのであれば、それは本人の問題に過ぎない。
3冊で1,100円なんて、魔法にしては安いと思いますよ(^^)
5月下旬には『王国 その4 アナザー・ワールド』の単行本が出るとか・・・(文庫化はいつ??)
本当に大切にしたいものは何なのか、考えるにはおススメです。
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by ungalmatsu
| 2010-03-05 17:55
| 本を読む