『小確幸』探求の日々

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毎日なんかいいこと見つけよう!大好きな「押尾コータロー」さんの話題を中心に・・・ほとんど休眠中の気まぐれブログです。悪しからず。

履き慣れた靴のように

旅に出る時には、何度も読んだお気に入りの本を持って行くことが多いです。
もしかしたら一度も本を取り出す余裕はないかも知れないし
逆にどこかで足止めを食って、何時間もつぶさねばならぬ羽目になるかも知れない・・・
そんな時、自分の一部になっているようなものだと、プレッシャーもショックもない(^^)


今まで、何度も一緒に旅をした本のうちの一冊がこれ。
もう長い間、読み返していませんでした。
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『遠い太鼓』
   村上春樹 (講談社文庫)

     1993年4月15日 第1刷



これは村上さんが1986年~1989年、
日本を離れてヨーロッパで生活しながら
小説を書き続けていた3年間の記録。




実際の村上さんはどうにもならないくらい疲れ切って日本を離れたそうなのですが
スペッツェス島のビーチで目にした「エーゲ海の法則」
(べろっと?ぽろっと?ぱらりと?)だとか
シシリーのパレルモでランニング中に犬と対決
(てめえ、ばかやろお、ふざけんじゃねぇよ!と日本語で怒鳴りつけて勝った)とか
イタリアのテレビの天気予報をする人のジェスチュアが凄くて抱腹絶倒モノ
(1週間雨が続いた時なんか、首でも吊るんじゃないかと心配するくらい真剣に
落ち込んでいた)とか
その場面を想像して笑っちゃう内容がいっぱいで、楽しめます。

そういや、村上さん本人でさえこんな風に言ってました。

不思議な話だけれど人というものは他人の身にふりかかる災難については
比較的簡単に想像力を駆使できるくせに(いや、そういうものだよ、
そういうことってあるんだよ、それくらい予想してなくっちゃ云々)、
それをいざ自分の身にあてはめるとなると、その精神力追求力は夏の午後の老犬のように
不活発になってしまう傾向がある。




そのまま通り過ぎていく観光的旅行者ではなく
そこに留まって生活の根をおろす恒久的生活者でもなく
気に入った場所にアパートを借りて何カ月か生活し、
何処かに行きたくなるとまた別の場所に移っていくという
“常駐的旅行者”だった3年の間に書かれた長編小説が
『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』であったこと、
そして、その3年間は村上さんが37歳~40歳になる間だったこと・・・


40歳を迎えるにあたって村上さんが思っていたことを
その年を越えてから改めて読んでいると、
「あぁ、そうか、(当たり前だけど)村上さんもそういう時期を越えてきたんだな。」と
なんだか今まで感じたことのない不思議な気持ちになりました。
つい最近、映画『ノルウェイの森』を観たせいもあるかもしれないけれど
はじめとおわりの部分がこれだけ心に残ったのは初めて。


どこかへ行ったからといって、何かが解決されるわけではないことを
と同時に、どこにいても、音楽を聴いたり、本を読んだり、知らない土地の話を聞いたりするだけで
得るものも確かにある、ということを知っている年になりました。
時間を経て何も解決していないように見えても、そういう時間を過ごすことに意味があるだろうなぁ・・・

もう一度ふりだしに戻れただけでもまだいいじゃないか、
もっとひどいことになる可能性だってあったんだ。


それでもふと“どこか”へ行きたくなることがあります。
そういえば私のパスポートの期限はそろそろ切れるのだっけ。
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by ungalmatsu | 2011-01-16 20:44 | 本を読む